小麦産地概況 カンサス州

カンサス州地図

小麦生産一般

カンサス州の農業統計地区は上図の通り、北西地区(NW:District 10)、西中央地区(WC:District 20)、南西地区(SW:District 30)、北中央地区(NC:District 40)、中央地区(Cent.:District 50)、南中央地区(SC:District 60)、北東地区(NE:District 70)、東中央地区(NC:District 80)そして南東地区(SE:District 90)の9地区に分けられている。

小麦の生産は全州にて行われているが、南中央地区(SC)、南西地区(SW)、中央地区(C)、北中央地区(NC)、西中央地区(WC)及び北西地区(NW)等、州中央から西部に掛けた地帯が主産地と言える。

同州で作付けられる小麦は、硬質赤色冬小麦(Hard Red Winter wheat)であるが、その生産量は全米第一位である。2000年小麦の生産量は3億4,780万ブッシェル(約948万トン)であり、アメリカの冬小麦生産量の凡そ25%を生産する。
小麦の作付け面積は、1937年に17,110,000エーカーを作付けこれが最高記録と成っている。第二時大戦後は10年余り1,400万~1,500万エーカーの作付けが続き、アメリカが膨大な余剰小麦を抱え込む原因を作り出した。2000年産より1,000万エーカー未満の作付けとなっている。

小麦の作付けを地区的に見ると、南中央地区の作付けが最も多く2000年産では221万エーカー(全州の凡そ22.6%)の作付けが行われ、次が中央地区の156万エーカーとなっている。中央部の3地区、西部の3地区は全て100万エーカー以上の作付面積となっている。全州作付面積の合計は、980万エーカーであった。小麦作付けの可能面積の凡そ64.4%に作付けが行われている。

1997年の農業センサスの結果では、小麦生産農家数は30,392戸となっており、同年の小麦収穫面積は9,560,615エーカーであり、これらをベースとすると1戸当たりの作付け規模は314エーカーとなる。収穫面積が100~249エーカー(約40~100ha)の規模の農家数が7,702戸(全体の25%強)と最も多い。次に収穫面積250~499エーカーが5,865戸となっている。1,000エーカー以上の収穫面積を持つ農家は3,912戸と報告されており、大型な小麦栽培が実施されている。大規模栽培農家は、南西地区に集中しており、2000年秋の作付けでは、同地区のハミルトン郡(Hamilton county)の1戸当たり平均作付け面積は1,181エーカー(約478ha)と成っており、第二位は同地区のモートン郡(Morton county)の947エーカーである。

灌漑されている小麦圃場は少なく、全州の凡そ5.2%を占めるに過ぎない。全て西部3地区に集中している。灌漑圃場での2000年産小麦の平均単位収量は60~65ブッシェル/エーカーであった。栽培形態は西部3地区では夏季休耕(summer fallow)が主体である。夏季休耕圃場の単位収量は、南西地区が最も高く平均51ブッシェル/エーカーであり、州平均では48ブッシェルと成っている。尚、中部3地区(北、中央、南)及び東部3地区(北東、東中央、南東)では、休耕せずに小麦の連作を行っている。この地区の平均単位収量は、33~44ブッシェル/エーカーと低い。2000年産冬小麦の作付面積は9,420,000エーカーと発表されており、内小麦の連作圃場は5,316,000エーカー(56.4%)となっている。収穫面積は5,014,000エーカー、全州平均単位収量は、46ブッセル/エーカーであった。

合衆国農務省が誕生したのは、1862年であり、翌年7月より同省の統計局より始めての作柄レポートが発表されたと言う。1872年にカンサス州政府はKansas State Board of Agriculture(カンサス州・農業院)を発足し、カンサス州は独自の作柄レポート・農業統計を発表したと言う。その後50年間2つの統計システムは続いた。そして、1924年にUSDAの統計局とカンサス州・農業院とが合同し作柄レポート・統計資料の作成を行う事で合意し、2つの統計システムが一本化するに至った。Board of Agricultureは1995年にカンサス州農務局(Department of Agriculture)と成り、連邦と州の共同作業は、カンサス州農務省の農業統計局(Kansas Agricultural Statistics Service)により実行されている。因って、カンサス州の小麦関連の統計資料は、その歴史を背景に多種に渡り非常に豊富である。

カンサス州の土壌は、北西地区及び西中央地区はChestnut soilsに属しKeith soilと称される。同土壌は海抜凡そ3,000~4,000フィートに平坦な草原にみられ、表土は灰褐色を呈し、3~4フィートの深さで微細な石灰質の砂を含む土壌となる。風蝕が起こり易い。冬小麦及びとうもろこし等穀物の栽培に適する。北中央地区及び中央地区の土壌はChernozem soilsに属し、Holdrege-Hall及びHay soilと称される。海抜2,200~3,000フィート先のKeith soilより乾燥した地方に見られる。砂状の石灰質石土壌が風により運ばれ堆積した土壌である。表土より4~6フィートの深さで砂質を増す。南中央地区及び南西地区の土壌は、Reddish Chestnut soilsと称される土壌である。比較的温暖で冬季の比較的短い地方の平原地帯に見られる。水分が十分でると極めて高い生産性を示す肥沃な土壌である。表土は褐暗褐色から赤味を帯びた褐色を呈す。カンサス州の東部の土壌は、Prairie soilsとなる。アメリカ中央平原(コーンベルト)の土壌は、このPrairie soilsである。平坦な草原地帯であり、海抜凡そ600~1,500フィート程であり、年間降水量は他の平原比較的多く30~40インチ地帯である。表土は黒色に近いが、数インチしたより赤味を帯びた褐色となる。カンサス州東中央地区から南東地区の一部では土壌中に石を含み、このような土壌は農耕には向かない。


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品種

同州の小麦は、先に触れたとおり硬質冬小麦のみが生産されている。 気象条件にて、粒質が必ずしも硬質(ガラス質=vitreous kernels)に成るとは限らないが、同州で昨付けられる品種は、98%が硬質赤色冬小麦品種と言える。

2002年産として作付けられた中心品種は、1995年より作付けが始まったJaggerであり、全州作付け面積の42.8%を占め、9地区の内7地区で第一位の作付け品種となっている。 第二位の品種は2137である。全州作付け面積の凡そ15.5%を占める。同品種の作付け地区は、北東地区、東中央地区及び南東地区と州の東部で栽培されている。これら人気品種を含み、カンサス州で作付けられている硬質赤色冬小麦の品種は凡そ30品種を数える。

  • Jaggerはカンサス州立大学のAgricultural Research Experiment Station及び連邦農務省Agricultural Research Serviceの共同開発にて育成された矮性(semidwarf)の硬質赤色冬小麦である。同品種の茎は2137に比較し極めて強く、耐倒伏性がある。赤さび病(leaf rust)及び黒さび病(stem rust)への抵抗性は他の冬小麦より優れている。黒穂病にも強い。全州にて作付けされるが、特に乾燥に強く、降水量の比較的少ない州西部に適する。製パン適正試験では、平均的な評価である。容積重は州西部で他品種より良好な結果を示している。
  • 2137はPioneer Hi-Bred International, Inc.にて開発されたが、1990年に同社の硬質赤色冬小麦の育種施設が閉鎖されたことより、連邦農務省及びカンサス州立大学がその後の育成を行った。Jagger同じ1995年にARS,USDAよりFoundation Seed及びRegistered Seedがリリースされた。同品種も矮性である。各種のモザイク病に耐性を持つ。ヘシアン蝿(Hessian fly)に強い。しかし、赤かび病(Fusarium blight又はScab。被害粒は有毒である)と黒さび病に弱い。州農務省は、カンサス東部地区では2137とトウモロコシとの輪作は避けるべく指導している。容積重はJaggerに劣る。製パン適正試験であは"acceptable"の評価である。蛋白質含有量では、同一条件下での栽培試験では、Jaggerが勝る。

小麦農家にとり高単位収量は品種選定で重要な要素になるが、蛋白質含有量が小麦価格に直接影響することより、高蛋白の品種が強く求められている。
因みに、2001年産小麦の品質報告では、北西地区では蛋白質12.7%~12.6%、容積重59.9~59.5ポンド/ブッシェル、西中央地区の小麦は蛋白質12.3%、容積重60.5~60.8ポンド、そして南西地区の小麦は蛋白質13.0~12.9%、容積重61.8~61.5ポンドとの結果であった。一方東部での品質結果では、北東地区の小麦は蛋白質12.0~11.8%、容積重62.2~60.9ポンド/ブッシェル、東中央地区では蛋白質11.2~10.6%、容積重59.7~59.8ポンド、南東地区の小麦は蛋白質12.1~12.2%、容積重60.9~61.1ポンドとなっている。

比較的降水量の多い州東部に於いて品種2137が作付けられており、容積重は良好であるが、蛋白質は平均的に西部地区の小麦より低めである。

カンサス小麦委員会、及びカンサス州立大学小麦研究センター等が中心となり、新しい銘柄(Class)である、硬質白色小麦(Hard White wheat)の育成に力を入れている。オレゴン州及びワシントン州に於いても、冬小麦のハード・ホワイト小麦を栽培しているが、カンサス州に於いても1998年にHeyne、Bettyの2品種が発表され1999年産として作付けられた。続いて1999年にTrego、2000年にLakinがリリースされ、現在カンサス州では凡そ160,000~180,000エーカー(全作付け面積の約2%)にハード・ホワイト小麦が栽培されている。全て矮性品種である。ハード・ホワイト小麦の栽培地区は西部3地区に集中している。Betty、Heyne及びTregoは穂発芽を起こし易いという難点を持つ。Tregoは硬質赤色小麦より単位収量が高い。最新の品種Lakinは製麺適正が他の品種より優れていると言われる。

現在ハード・ホワイト小麦の世界の市場はオーストラリア小麦により抑えられているが、カンサス小麦委員会は、アジア諸国への輸出を目的とし同州北西地区のハード・ホワイト小麦の生産量を増すこと、そして西部海岸のアジア系移民の麺用として同州西中央地区並びに南西地区での栽培を増やす事を目指している。国内消費に於いては、麺用だけでなく、白い全粒粉による製パンの可能性を研究中とも言われる。


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気象

カンサス州はアメリカ合衆国の略中央に位置している。海抜はコロラド州境より東南に向かい低くなる。西部の一番高い地方はシャーマン郡(北西地区)とワラス郡(西中央地区)の4,000フォートであり、南東地区のチェロキー郡では海抜750フィートとなっている。

年間降水量は、州西南部に於いては16~20インチ、北西地区では凡そ20インチである。北中央地区から南中地区は凡そ22~26インチ地帯であり、州の東部三分の一は30~40インチ地帯で、南東部が最も多く40~42インチとなっている。
降水は4月から9月末の期間に多く、西部地方ではこの期間に14~16インチ(年の降水量の凡そ80%以上)を記録する。中央部での同期間の降水量は16~20インチ、東部では22~26インチが同時期に降る。

同州の気温は、最低気温は華氏マイナス30度(摂氏マイナス34度)以下ともなり、一方最高気温は全州で110度(摂氏43度)以上に達する。1月の平均気温は、州北部で華氏26度~30度、州南部で30~34度程度である。極端な低温を記録する事もあるが、概して穏やかな冬と言える。7月の平均温度は州西部で76~80度、中央部は80度、そして中央から南東部にかけ80~82度である。3月から10月に亘り各地で100度以上を度々記録する。真夏の7月、8月では100度以上の日が20日以上続く事もある。

Killing Frostの無い期間は、州の北東のコーナーから南西の角を結ぶ線が凡そ180日であり、この対角線の東側は190日~200日(南東地区)、西側は170~160日(北西地区)となっている。北西地区の秋の最初のKilling Frostは10月10日以前であり、無霜期間180日地帯では10月15日頃となる。南東地区では10月20日~25日に最初のKilling Frostが発生する。晩春のKilling Frostは北西地区で4月30日頃、中央地区4月25日南東地区で4月15日~10日頃となっている。冬季は殆ど降雪が見られず、小麦は寒風に晒される。低温に寄る被害、霜による被害が毎年繰り返されている。

冬小麦の播種は、州の西部地区(北西~西南部地区)に於いて9月上旬より開始され、徐々に州東部に移行する。9月下旬から10月10日頃が全州で播種の最盛期を迎える。11月10日~17日に全州に於いて播種は完了する。収穫は南東地区並びに南中央地区では6月15日頃から開始され、全州で6月20日から7月10日に最盛期を迎える。南部地方では7月始めに収穫は終了し、7月25日頃までに全州で略完了する。

枯熟期から凡そ30日前(5月上旬から中・下旬)、即ち穂孕み期から開花期の気温と降水量が単位終了に大きく影響する。尚、登熟期の高温多湿は病害の発生を促進する。特に州東部に多く栽培され、全州で15.5%のほ場に栽培されている品種2137は赤かび病(Scab)に罹病し易く、夏季の降水と収穫状況に注視が必要である。 播種後の降水量が少ないと小麦の根の発育が悪く、冬季の霜害又は凍結による被害を大きくする原因となる。


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